ダックスフンドの歴史
ダックスフンドは現代の私たちにとってもポピュラーな犬種ですよね。胴長短足の独特のスタイルで歩く姿は飼い主の心を掴んで放しません。そんなダックスフンドの歴史をた辿ってみると、意外と面白いことが分かってくるんです。
今から遡ること 800~900年前。ダックスフンドはアルプス山脈の山岳地帯に生息していたジュラ・ハウンドとドイツ原産のドーベルマン(ピンシェル)から派生したと言われています。当時のダックスフンドは現在主流のロングコートではなく、ドーベルマンのようにスムースコートだったんですよ。
ダックスフンド(Dachshund)は、ドイツ語で Dachs(アナグマ)と Hund(犬)を組み合わせて出来た言葉なんです。これは、アナグマに似ていたからそのような名前が付いたのではなく(似てないですよね)、アナグマを捕まえる猟犬として活躍していたことから付いた名前なんです。
アナグマは夜行性。夜な夜な現れては村の農作物などを荒らす厄介者。昼間は巣穴の中に潜って休んでいます。人間では巣穴を見つけるのもアナグマを穴から引きずり出すのも大変です。そこで、ダックスフンドの登場。優れた嗅覚でアナグマの巣穴を見つけ、狭い巣穴へ素早く潜って、アナグマを巣穴の外へ追い出します。
ダックスフンドの胴長短足はアナグマの巣穴へ潜るのに適しているばかりか、地面に鼻が近くなることでより正確に臭いをかぎ分けることができるようにするためのものだったんですね。

動物図鑑より
ところで、アナグマと言えば体重は 5~16kg ほどあります。あれっ? ダックスフンドの方がかなり小さいと思いませんか? 現在最もポピュラーなミニチュア・ダックスフンドの体重は頑張っても 5kg ほどです。これではアナグマに勝てません。
■動物図鑑より
実はアナグマ猟が盛んだった12~13世紀のダックスフンドは、ミニチュアサイズではなく、スタンダードサイズのダックスフンドなんですね。現在のスタンダード・ダックスフンドの体重は 9~12kg 程あり、当時のスタンダード・ダックスフンドはもっと大きかったと言われていますから、これならアナグマに勝てそうです。
アナグマに勝てる大きさを持った当時のダックスフンドですが、アナグマだってなんの抵抗もせずに巣穴から逃げ出すわけでもないでしょうし、巣穴の壁面に体がこすれたりと、スムースコートだったダックスフンドには、まだ弱い点があったように思えます。
その弱点の克服が目的かどうか真意は定かではありませんが、スムースのダックスフンドは比較的早い段階で改良が行われ、堅い被毛を携えたワイヤーコートのダックスフンドが誕生します。これはシュナウザーなどの剛毛を持った犬種との交配によって誕生したと考えられます。
15世紀頃になるとダックスフンドとスパニエルを交配して、現在に近いロングコートのダックスフンドが誕生します。ロングコートのダックスフンドにはいったいどんな目的があったのでしょうね。そんなことを考えると楽しくなってきますが、ドイツの実用一辺倒なお国柄を考えても、愛玩目的のため飾り毛の付いたダックスフンドを作出したわけではなさそうですね。
さて、大きなアナグマ退治に大活躍したダックスフンドですが、村を荒らす動物はアナグマだけではありません。ネズミやテン、穴ウサギなどスタンダードサイズのダックスフンドでは巣穴に潜り込めないような動物がたくさんいます。そこで、品種改良によってサイズを小さくする工夫が行われていくことになります。
19世紀になってミニチュアサイズ、カニンヘンサイズのダックスフンドが相次いで登場します。ミニチュア・ダックスフンドは既に私たちの生活になじみの深いものですが、カニンヘン・ダックスフンドはご存じない方も多いでしょう。
カニンヘン(Kaninchen)とはドイツ語で「うさぎ」を意味することからお分かりのように、穴ウサギを狩るための猟犬として改良されたダックスフンドです。決してお顔が小っちゃくてウサギに似ているからではないんですね。